『永遠の仔』(二)秘密

永遠の仔〈2〉秘密 (幻冬舎文庫)

”いつも遺言を書いている女の子(イフェメラ)”の言葉が印象に残った。

「私の幸せを願っていると何度も言いながら、あなたたちは、…ありもしない幸せの基準を、適当に押しつけ、私が基準を超えないと、非難したよね」

うちの親もそうかな。家事なんてまるで時間の無駄、子供もうるさくて嫌いだし、結婚にメリットを感じないのに、「結婚して幸せになって」だって。

「頑張らないと生きる値打ちはないと、あなたたちは繰り返す。…でも、あなたたちが言う頑張り、努力する道は、際限なく欲望に満ちた暮らしをめざす道でもありはしない?…生き残るためには、老いや障害は切り捨てても、嘘をつき約束を破っても、仕方がないよと、言い逃れることのできる道ではありはしないの?」

「欲望に満ちた暮らしをめざす道」…欲しくもないものを買うよう、あらゆるメディアで発せられ続けるCM、流行を追いかけるように仕組まれているような感じ。
田舎だとデパートは県に1つしかなかったりするが、東京では、新宿には伊勢丹小田急高島屋、とあるし、渋谷には東急、西武、銀座では三越松屋日本橋にも三越高島屋…。気がつけばかつての最新スポット恵比寿ガーデンプレイスは10周年をむかえ、丸ビル、カレッタ汐留、六ヒルオアゾ、丸の内マイプラザ…とめまぐるしく”押させておきたいスポット”ができる。…でも別に知らなくてもいいんだよね。行きたくなれば、行きたいときにのんびり行けばいいし。気に入った服は何年でも着ててもいいし(ただし、”太らなければ”)

以前にここに書いた『夢をかなえる人の不思議の手帳』でも、「まいにち60%の法則」ということが書いてあります。「120%で毎日を生きていると疲れます。すると、時間があっても何も手につかない。だらだらと本屋を徘徊したり、…ぐち満載の食事会でお互いをなぐさめあい、帰りに何となくさみしい気分になったり…。」

確かに、徹夜とか詰めて仕事をしてその時は物凄いパワーが出るけれども、熱を出して休日は寝たり起きたりの生活…ってことも以前はありました。

同じく手帳より、「人を120%まで駆り立てるのは不安だからです」

えっ?と、これはかなり衝撃的な”事実”でした。だって以前の私をよーく考えると、無理してサービス残業して上司に気に入られようとすることだって、「クビになったら困る」「異動させられたら困る」からだったから。(ちなみに今は自分の体調を気をつけるようにしてるので、体調が悪くなるまでは頑張らないことにしています。)

永遠の仔』(二)秘密』に戻り、「…人は、遥か昔にふたつにわけられていた。成功者と敗残者、有名人と無名人。あなたたちは、成功と有名の依存症なのよ。」

何かっていうと、「勝ち組・負け組」に分けたがる現在の日本社会への皮肉にもなりますね。

第3巻を読んでからP.60あたりを読み返すと、雄作の身勝手さが際立つ。

P.74あたりもなかなかいい感じ。
「三年経って、使えるようになると、みんな、やめるか、条件のいいところに移るだろ?返り咲きナースは腰痛を抱えてる人が多いし…。人手を増やしてくれるよう、事務局に頼みにゆくと、経営がって言う」

そうやって現場の人間にしわ寄せが来るんだよね。現場の人が頑張っているお陰で、現場が回って、事務方の人も食べていけてるのにね。事務方の人は現場の人の代わりはできないでしょう?

それに労働には正当な金額が払われなきゃ。そうじゃないと、やっぱりよそに行かれちゃうよね。労働者も年齢が下がるほど、そういうところはシビアで、条件の悪い会社は、さっさと見切られちゃうと思うんだよね。

今日の花
職場:ガーベラ
自宅:アジサイ(紫、ブルー)/アジサイ(ピンク)、アストランチア(マヨール)、ブバリア(赤)